【連載講和】所長 内野和顕『心不全−2』


『心不全−2』心収縮の保たれた心不全

心不全は心臓のポンプの機能が低下した状態であること、心臓の収縮力が低下した心不全では心臓の内腔は拡大するというお話を前回致しました。
今回は心臓の収縮力低下がなくても心不全が起こるというお話です。
心臓のポンプ機能には収縮機能と拡張機能の二つがあります。心筋の拡張する能力が低下すると、左心室に十分な血を貯めることができないため、心臓の収縮がよくても心臓から排出される血液量が減少します。このタイプの心不全を「心収縮の保たれた心不全」と呼びます。「心収縮の保たれた心不全」では心臓の内腔拡大(左心室の拡大)はおこらず、胸部写真でも心陰影の拡大を認めません。
「心収縮の保たれた心不全」の存在が明らかになったのはわずか20年程前のことです。現在では「心収縮の保たれた心不全」は心不全全体の半分近くを占めていることがわかってきました。「心収縮の保たれた心不全」は糖尿病、高血圧、女性、加齢などの要素を持っている方に発症しやすいことが分かってきました。「心収縮の保たれた心不全」の心エコー図では心臓の収縮機能は良好なのですが、拡張機能が低下しています。心不全診療で最も重要なのは「呼吸が苦しい」という自覚症状です。症状のある方は是非ご相談下さい。
なお、「心収縮の低下した心不全」あるいは「心収縮の保たれた心不全」のどちらのタイプ心不全においても、左心室で産生されるホルモンである血中BNP値が増加して来るので心不全の診断の参考となります。