【連載講和】所長 内野和顕『結核』


やさしい講話 第13回

結核                坂戸診療所長 内野和顕

昔、結核は不治の病でした。我が国が結核をある程度克服できるようになったのはつい最近のことです。明治以降でも石川啄木、国木田独歩、滝廉太郎、堀辰雄、正岡子規、樋口一葉といった歴史上の人物がのきなみ結核で亡くなっています。1950年になっても人口10万人あたりの日本の結核患者数は698.4人と凄まじい数です。しかし2015年には14.3人と劇的に低下してきています。

では、現在の日本で結核は克服されたと言えるのでしょうか? いや決してそうではありません。日本の結核患者数は先進国と比べてまだまだ多く、未だ結核が「まん延している国」なのです。米国の人口10万人あたりの結核患者数は3.2人なのに比べて日本は14.3人であり、なんとアメリカの4.4倍も多いのです。米国以外の先進国ではカナダ4.6人、ドイツ5.6人など全て10人以下です。WHOの定義では患者数10人以下であることが結核のまん延が低い国なので、残念なことに先進国で日本のみが結核の中程度のまん延国に分類されています。

結核の発病予防にはBCGワクチンが有効であり、日本では必ずBCGを接種します。しかし米国では発症頻度が低いためBCG接種をしません。米国留学時に娘を小児科受診した際、娘の腕が医学教材になってしまいました。小児科医は実習の医学生に「これがBCGワクチンの接種跡だ。日本ではまだBCGをしているのだ。」と熱心に説明したのです。

私が受け持った患者さんで結核と診断した方々は、毎日毎回の食事がほとんどインスタントラーメンだったなど、極めて栄養状態の悪い方が多かったです。  初診時にやせ細り多量の結核菌を排出していた患者さんは残念なことにエイズを併発していました。低栄養状態、免疫機能低下が結核を発症させ、悪化させる素地なのです。毎日、バランスの良い、規則正しい食事をすることが極めて重要です。