腎臓の話


『腎臓の話』

 「エリスロポエチン」は骨髄の赤血球産生に必須のホルモンです。このエリスロポエチンもなんと腎臓から分泌されているのは驚きです。腎臓には動脈血の酸素濃度を感知するセンサーがあり、酸素濃度の低下を感知すると尿細管周囲の細胞からエリスロポエチンが分泌されます。分泌されたエリスロポエチンは骨髄に作用し赤血球の産生を増加させます。エリスロポエチンは尿細管の間質細胞で作られるので、腎臓の機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が低下し貧血になるのです。この状態を腎性貧血と呼びます。ありがたいことに現在ではエリスロポエチンとほぼ同じ働きをするペプチド(EPO製剤と呼びます)が遺伝子工学的に合成されており、腎機能低下の患者さんの貧血治療の特効薬として使用されています。人生貧血の患者さんの貧血はこの薬で著明に改善します。

陸上競技や水泳の長距離選手が持久力向上のため高度が1,600mもある米国コロラド州などで高地トレーニングするのもエリスロポエチンと関係があります。高地では空気中の酸素濃度が薄いため血中の酸素濃度が低下し、それを腎臓のセンサーが感知して腎臓からエリスロポエチン分泌が増加し、結果的に選手の赤血球数が増加する効果があるのです。赤血球数が増加すると筋肉など組織への酸素供給効果が上がり、持久力が向上し競技で有利になると考えられています。しかし手っ取り早くエリスロポエチンの注射だけで赤血球を増やそうとするのは御法度です。この行為は明白なドーピングであり競技者失格なのです。